タイトル:「コーヒーを飲むと死亡リスクは下がる」は本当か? 40万人のデータを読んでみた
「コーヒーは体に悪い」ってよく聞くけど
コーヒーについては、健康情報の中でも評価が分かれやすいテーマです。「カフェインは体に悪い」と言われることもあれば、「コーヒーは健康にいい」という話も聞きます。
どちらもよく耳にするのに、実際どちらなのか、モヤッとしたままの人も多いのではないでしょうか。
気になったので調べてみた
こういう「結局どっちなの?」という話を放っておけないのが健康オタクPTの性分だったりするんですわ。今回は、コーヒーと死亡リスクの関係を大規模に調べた研究を探してみました。
見つけたのは、米国のグループが2012年に医学誌「New England Journal of Medicine(NEJM)」に発表した研究です(Freedman et al., 2012)。
研究で確認された事実
対象は、米国のNIH-AARP Diet and Health Studyに参加した50〜71歳の男性229,119人・女性173,141人、合計40万人超。がん・心疾患・脳卒中の既往がある人はあらかじめ除外されています。1995年から2008年まで、延べ514万人年という規模で追跡した前向きコホート研究です。
追跡期間中、男性33,731人・女性18,784人が亡くなりました。
コーヒーを飲まない人と比べて、コーヒーを飲む人の死亡リスク(交絡因子を調整したハザード比)は次のようになっていました。
男性
- 1日1杯未満:0.99
- 1日1杯:0.94
- 1日2〜3杯:0.90
- 1日4〜5杯:0.88
- 1日6杯以上:0.90
女性
- 1日1杯未満:1.01
- 1日1杯:0.95
- 1日2〜3杯:0.87
- 1日4〜5杯:0.84
- 1日6杯以上:0.85
(いずれもp<0.001)
1日2〜5杯程度のコーヒーを飲む人で、死亡リスクが10〜16%ほど低いという関連が見られています。
そこから考えられること
ここで見逃せないのが、研究の中で報告されているもうひとつの事実です。コーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて喫煙者の割合が高い傾向がありました。
単純にコーヒーを飲む人と飲まない人を比べただけでは、「喫煙」という別の要因の影響が紛れ込んでしまいます。
この研究では、喫煙状況などを統計的に調整したうえで、上記のハザード比を算出しています。喫煙の影響を取り除いてもなお、コーヒーをよく飲む人ほど死亡リスクが低いという関連が残っていた、というのがこの研究のポイントです。
ただし、これはあくまで観察研究(コホート研究)です。「コーヒーを飲めば死亡リスクが下がる」という因果関係を証明したものではありません。喫煙以外にも、測定しきれていない生活習慣の違いが影響している可能性は否定できません。
PTとしての解釈
とはいえ、はっきり言えることもあります。40万人規模・13年以上という大規模かつ長期の追跡データで、喫煙などの主要な交絡因子を調整してもなお、コーヒー摂取と死亡リスク低下の関連が一貫して見られたことには意味があると思います。
少なくとも「コーヒーを飲む習慣そのものが、健康リスクを大きく高める」と考える根拠は、このデータからは見当たりません。
一方で、「コーヒーを飲めば健康になる」と積極的に断定するところまでは、この研究だけでは言えません。PTとしては、「コーヒーを楽しむこと自体を、過度に心配する必要はなさそうだ」というくらいの受け止め方が、いまのところ妥当だと考えます。
結局どうすれば?
- コーヒーを日常的に飲んでいる人は、それ自体を過度に心配しなくてよさそうです
- ただし「コーヒーを飲めば健康になる」と考えて量を増やす根拠にはなりません
- カフェインへの感受性や睡眠への影響には個人差があるため、体調に合わせて量を調整するのが基本です
「コーヒーは敵でも万能薬でもない」――そのくらいの距離感で付き合うのが、今のところ現実的だと思います。
