「寝不足だと太る」ってよく聞くけど
「睡眠不足だと太りやすい」という話、健康情報でよく見かけますよね。仕事や育児で忙しいと睡眠時間はどうしても削られがちですし、
「寝不足→太る」というフレーズは、ダイエット系の記事でもよく使われる定番の切り口です。
でも、これって具体的にどういう研究で示されたことなんだろう、体重が増えるとしたらどのくらいの量なんだろう、と気になったことはありませんか。
気になったので論文を掘ってみた
こういう「よく聞くけど、元ネタは何?」という話を放っておけないのが健康オタクPTの性分だったりするんですわ。
今回も気になって、実際に睡眠不足と体重の関係を調べた研究を探してみました。
見つかったのは、アメリカのグループが2013年に学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」に発表した研究です(Markwald et al., 2013)。
研究で確認された事実
対象は健康な成人16人。14〜15日間の入院下で行われた実験的な研究で、同じ参加者に「十分な睡眠をとる期間」と「5日間、睡眠不足の状態が続く期間」を設け、1日あたりのエネルギー消費量・摂取量・体重の変化を比較しました。
結果ははっきりしています。
- 睡眠不足の期間は、1日の総エネルギー消費量がむしろ平均約5%増加していた
- にもかかわらず、エネルギー摂取量(食べる量)がそれを上回って増加しており、特に夕食後の夜間の食事量が増えていた
- その結果、睡眠不足の期間中に体重が平均0.82±0.47kg増加した
これは実際に測定された数値です。
そこから考えられること
ここで面白いのは、「睡眠不足だと消費カロリーが減って太る」という単純な話ではなかった点です。むしろ体を起こしている時間が長くなる分、消費エネルギーは増えていました。それでも体重が増えたのは、消費が増えた以上に、特に夜間に食べる量が増えていたから、という結果でした。
ただし、この研究の対象は16人と少人数で、期間も5日間という短期間の実験です。日常生活で数か月・数年単位の睡眠不足が続いた場合にも同じことが起きるかどうかは、この研究だけでは分かりません。ここは正直に線を引いておきたいところです。
PTとしての解釈
とはいえ、PTとしてはっきり言えることもあります。「睡眠時間を削ると、消費カロリーが減るからではなく、夜に余分に食べてしまうことを通じて体重が増えやすくなる」という構図が、この研究では明確に示されています。「寝不足だと代謝が落ちて太る」というよりも、
「寝不足の夜についつい食べてしまう」ことのほうが、体重増加の主な経路だった、と捉えるのが正確だと思います。
だとすれば、対策の焦点も見えてきます。「寝不足を解消する」ことと同じくらい、「寝不足の夜に、余分に食べる行動そのもの」を意識することにも意味がある、とPTとしては考えます。
結局どうすれば?
- 睡眠時間を確保することを基本にする
- 睡眠不足が続きそうな日は、特に夕食後の”つい食べ”に注意を向ける
- 「代謝が落ちるから太る」ではなく「夜に食べる量が増えるから太る」と理解しておく
「今日は寝不足だから、夜食は控えめに」――そのくらいの意識づけから始めてみるとよいと思います。
