食後10分歩くだけで血糖値の急上昇は抑えられる?論文を掘ってみた

「食後に軽く歩くと血糖値にいい」って、よく聞きますよね。

でも、具体的にいつ、どのくらい歩けばいいのかとなると、意外とよく分かりません。

こういう「なんとなく良さそう」という健康情報を見ると、つい元ネタの論文を掘りたくなるのが健康オタクPTの性分だったりするんですわ。

そこで今回は、「食後に歩く」というタイミングに意味があるのかを調べてみました。

目次

研究で確認されたこと

今回見つけたのは、ニュージーランド・オタゴ大学のReynoldsらが2016年に医学誌『Diabetologia』に発表した研究です。

対象となったのは、2型糖尿病患者41人。平均年齢は60歳、糖尿病歴は平均10年でした。

研究では、

  • 1日30分、好きな時間に歩く
  • 毎食後10分ずつ歩く

という2つの方法を比較しました。

それぞれ2週間ずつ実施し、加速度計で身体活動を測定。さらに持続血糖モニターを使って、食後の血糖反応を調べています。主要な評価項目は、食後3時間の血糖値の上昇量を示すiAUCでした。

そして結果は、なかなか興味深いものでした。

毎食後10分歩いた期間では、「1日30分を好きな時間に歩く」期間と比べて、食後血糖の上昇を示すiAUCが12%低くなりました。

さらに夕食後では、その差が22%。

つまり今回の研究では、

同じ1日30分歩くなら、好きな時間にまとめて歩くより、食後に分けて歩いたほうが食後の血糖反応を抑えやすかった

という結果です。

ここは結構面白いところです。

「運動はまとめて30分やればいい」という話ではなく、「いつ動くか」も食後の血糖反応には関係していそうなんですね。

夕食後の効果が大きかったのはなぜ?

特に気になるのが、夕食後の22%という数字です。

研究では、夕食時に最も多くの炭水化物が摂取され、夕食後は座って過ごす時間も多かったことが報告されています。

つまり、

食べる量が多い
↓
その後あまり動かない
↓
そこに食後の10分歩行を入れる

という条件だったため、夕食後に歩くことの効果が大きく出た可能性があります。

ただし、ここは研究者らの考察です。

「夕食後だから必ず効果が大きい」と証明されたわけではありません。

このあたりは、論文を読むときに分けて考えたいところです。

じゃあ、健康な人にも効果があるの?

ここは気になりますよね。

今回の研究対象は、あくまで2型糖尿病患者41人です。

そのため、

「健康な人でも食後10分歩けば、血糖値が12%下がる」

とは、この研究からは言えません。

一方で、健康成人を対象にした別の研究でも、食後の活動タイミングと血糖反応が調べられています。

2018年のランダム化比較試験では、78人の健康成人を対象に、食後の軽い運動を開始するタイミングを比較。食事開始45分後から10分間運動した条件では、座って過ごした条件と比べて血糖反応に変化がみられました。

なので、「食後に動くことが血糖反応に影響するのは、糖尿病患者だけの話」と考える必要もなさそうです。

ただし、この2018年の研究は「食後10分歩く」という今回の研究と同じ条件ではありません。

だから、今回の研究で確認された12%や22%という数字を、そのまま健康な人に当てはめるのはNG。

ここは分けて考えるのが正確です。

PTとしてはどう考える?

今回の研究を読んで、僕が面白いと思ったのは、「運動量を増やす」だけではなく「運動するタイミングを変える」という発想です。

1日30分の運動時間そのものを増やさなくても、

食後に10分歩く

という形に分けることで、食後の血糖反応に違いが出ました。

もちろん、41人を対象とした短期間の研究です。

「食後10分歩けば糖尿病を予防できる」といった話まで、この研究から広げることはできません。

でも、

「食後に少し動く」という習慣は、血糖コントロールを考えるうえで取り入れてみる価値がある。

これは、今回の研究から考えてよさそうです。

しかも、ジムに行く必要もなければ、特別な器具もいりません。

食後に10分歩くだけ。

こういう「頑張りすぎなくてもできる方法」が研究で検討されているのは、個人的にはかなり実用的だと思います。

結局どうすればいい?

今回の研究から、僕ならこう考えます。

まずは夕食後に10分歩いてみる。

これで十分です。

今回の研究では、食事終了後5分以内に歩き始め、毎食後10分歩くという条件でした。

なので、研究条件に近づけるなら、

夕食を食べ終わったら、できるだけ早めに10分歩く。

くらいから始めればいいでしょう。

毎日完璧にやる必要もありません。

「血糖値のために運動しなきゃ」と考えると面倒になりますが、

「夕食後に10分だけ散歩する」

なら、かなり現実的です。

今回の研究は2型糖尿病患者を対象にしたものなので、健康な人に同じ効果が出るとまでは言えません。

それでも、食後の10分を「座って過ごす時間」から「歩く時間」に変えてみる。

これは、ちょっと試してみてもいい習慣だと思います。

参考にした論文

Reynolds AN, Mann JI, Williams S, Venn BJ.
Advice to walk after meals is more effective for lowering postprandial glycaemia in type 2 diabetes mellitus than advice that does not specify timing: a randomised crossover study.
Diabetologia. 2016;59(12):2572–2578.
PMID: 27747394 / DOI: 10.1007/s00125-016-4085-2. 

PubMedで論文を確認する⁠

補足:健康成人を対象とした関連研究

Reynolds AN, Venn BJ.
The Timing of Activity after Eating Affects the Glycaemic Response of Healthy Adults: A Randomised Controlled Trial.
Nutrients. 2018;10(11):1743.
PMID: 30428521 / DOI: 10.3390/nu10111743. 

健康成人を対象とした研究(PubMed)⁠

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