運動後のストレッチで筋肉痛は防げる?研究を調べてみた

久しぶりに運動した翌日。階段を下りるたびに、太ももが「うっ」となる。

そんなとき、よく言われるのがこれです。

「運動のあとにストレッチしなかったから、筋肉痛になったんだよ」

部活でも、ジムでも、運動のあとはストレッチ。それが当たり前になっている人も多いと思います。

……でも、これ本当なんでしょうか。

そもそも、筋肉を伸ばすことで、なぜ翌日の筋肉痛が防げるのか。言われてみると、ちゃんと説明できる人はあまりいない気がします。

気になったので、研究を掘ってみました。

ちなみに、ここで言う筋肉痛は、運動の翌日から数日後にかけて出てくるもの(遅発性筋肉痛)のことです。

調べてみると、この疑問には、ちゃんと答えを出そうとした研究がいくつもありました。しかも、その結果が「え、そんなもの?」という数字だったりするんですわ。

目次

12件の研究をまとめると、差は「100点満点で1点」

まず見てみたのが、2011年のCochraneレビューです。Cochraneは、医療の研究を厳しい基準でまとめることで知られる国際的な団体です。

このレビューでは、運動の直前や直後にストレッチをして、筋肉痛が減るかを調べた研究を12件まとめています。筋肉痛の強さは、100点満点のスケールにそろえて比べています。

結果はこうでした。

  • 運動前のストレッチ:運動の翌日の筋肉痛が、平均0.5点減った
  • 運動後のストレッチ:運動の翌日の筋肉痛が、平均1点減った

100点満点で、1点。

半日後から3日後まで見ても、同じような結果でした。

■研究では、実際にこう報告されています

“The evidence from randomised studies suggests that muscle stretching, whether conducted before, after, or before and after exercise, does not produce clinically important reductions in delayed-onset muscle soreness in healthy adults.”

— Herbert RD, et al.
Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise
Cochrane Database Syst Rev, 2011

参照:PubMed 原著論文(DOI)

運動の前でも、後でも、前後両方でも、健康な大人の筋肉痛を「意味のある程度には」減らさなかった。これが、このレビューの結論です。

ただ、12件のうち11件は、ストレッチをした人が10〜30人ほどの小さな研究でした。

残りの1件だけが、桁違いに大きい。

2,377人を集めた、ちょっと変わった実験

その大きな研究が、2010年に報告されたJamtvedtらのランダム化比較試験です。ランダム化比較試験は、参加者をくじ引きのように2つのグループに分けて比べる方法です。

この試験、やり方がちょっと面白い。

参加者は、ふだんから定期的に運動している大人2,377人。インターネットで募集し、インターネット上で行った試験です。

参加者をランダムに2つのグループに分けました(ストレッチ群は1,220人)。

  • ストレッチ群:運動の前後に、脚と体幹の7つの筋肉のグループを、それぞれ30秒ずつ伸ばす
  • 対照群:ストレッチをしない

これを12週間続けて、毎週、筋肉痛やけがの状況をオンラインで報告してもらいました。

実験室ではなく、それぞれの人がふだん運動している環境で行った、かなり「現実に近い」試験です。

ただし、ストレッチをしたかどうかも、筋肉痛やけがの状況も、すべて本人の申告です。自分がどちらのグループかは、参加者本人にも分かっていました。その点は割り引いて読む必要があります。

同じ試験なのに、「ほぼ効果なし」にも「効果あり」にも見える

ここ、今回いちばん面白いところです。

Cochraneレビューは、この試験を「運動前後のストレッチで、1週間の中でいちばん強かった筋肉痛が、100点満点で約4点低かった」とまとめています。統計的には意味のある差だけど、非常に小さい、と。

一方、この試験の論文自体は、別の項目で結果を報告しています。

参加者が「つらい(bothersome)筋肉痛があった」と申告した週の割合です。

  • ストレッチ群:24.6%
  • 対照群:32.3%

こう並べると、ストレッチで「つらい筋肉痛」の週が減ったように見えます。実際、著者らは「つらい筋肉痛のリスクを減らす」と結論しています。

どちらかが間違っているわけではありません。

同じ参加者について、見ている項目が違うんです。痛みの強さを点数で比べると、差はごくわずか。でも「つらい筋肉痛があったか」を本人に聞くと、その週の割合は少し減っていた。

……なるほど。「効果があるか、ないか」の二択で考えると、見誤るところでした。

その後のレビューでは?

Cochraneレビューは2011年のもので、調べた研究は2010年までのものです。まとめられた研究も、すべて偏り(バイアス)のリスクが中〜高と評価されています。その後はどうなのか。

今回確認できた、その後のレビューを1つ紹介します。なお、Cochraneレビュー自体の更新版があるかどうかは、今回は確認していません。

2021年、Afonsoらが、運動後のストレッチを「休むだけ」などと比べたランダム化比較試験をまとめて解析しました。解析に使えたのは10件、229人です。

結果は、休むだけと比べて、運動の24時間後・48時間後・72時間後の筋肉痛に、ストレッチの効果は見られませんでした。筋力の回復にも効果はありませんでした。

ただし、研究は小規模なものが多く、対象は17〜38歳、主に男性です。著者ら自身、エビデンスの確からしさは「非常に低い」としています。

それでも著者らは、「回復のために運動後のストレッチを勧める」という推奨は、現時点では避けるべきだ、と書いています。

ついでに気になる「ケガ予防」は?

ストレッチをする理由として、筋肉痛と並んでよく挙がるのが「ケガ予防」です。

先ほどの2,377人の試験では、けがも調べていました。

脚や腰のけが全体のリスクは、ストレッチをしても減りませんでした。一方、筋肉・靭帯・腱のけがに限ると、1人あたり年0.88件から0.66件へと、少ない結果でした。

もう一つ、2014年のLauersenらのメタ解析があります。スポーツのけがを予防する運動プログラムを調べたランダム化比較試験25件、26,610人をまとめたものです。

種類ごとに見ると、ストレッチには予防効果が見られませんでした(リスク比0.963、95%信頼区間0.846〜1.095)。一方で、筋力トレーニングはリスク比0.315と、けがのリスクが大きく低い結果でした。リスク比は、1より小さいほどリスクが低いことを表します。

ただし、これはスポーツをする人を対象にした研究で、プログラムの内容もさまざまです。ストレッチと筋力トレーニングを直接比べた試験の結果でもありません。「筋トレをすればケガが◯分の1になる」とまでは言えません。

PTとして、私はこう考えます

研究を調べてみて、私はこう整理しました。

「筋肉痛を防ぐために、運動後のストレッチをがんばる」必要はなさそうです。

今回確認できた研究では、筋肉痛を減らす効果は、ほとんど感じられないくらい小さいものでした。研究には古さや偏りのリスクといった限界がありますが、筋肉痛予防を目的にストレッチへ大きな効果を期待する根拠は乏しい。ここは、はっきり言っていいと思います。

ただし、「ストレッチは無意味」という話ではありません。

今回調べたのは、筋肉痛とケガの話だけです。体の柔らかさを保ちたい、運動のあとに体をゆるめると気持ちいい。そういう目的なら、それはそれで別の話です。

大事なのは、目的を分けて考えることだと思います。

  • 筋肉痛を防ぎたい → ストレッチに大きな期待はしない
  • ケガを防ぎたい → スポーツのけがの研究では、ストレッチ単独より、筋力トレーニングを含む運動に有望な結果
  • 体をゆるめたい、気持ちよく終わりたい → やりたいならやればいい

「ストレッチをしなかったから筋肉痛になった」と自分を責める必要もない、ということです。

なお、40代以降に絞った結論は、今回の研究からは出せません。2021年のメタ解析は17〜38歳・主に男性が中心で、2,377人の試験の年齢の内訳は今回確認できませんでした。

結局、自分はどうすれば?

1. 運動後のストレッチは「筋肉痛予防のため」ではなく、やりたいならやる、くらいでいい
2. ストレッチをしても、筋肉痛はふつうに来るものと考えておく
3. ケガが気になるなら、ストレッチだけに頼らず、筋力トレーニングも運動に取り入れる(けがの経験や運動の内容に合わせて)

1と2は今回の研究を読んだうえでの私の解釈、3はスポーツのけが予防の研究結果をもとにした私の考え方です。

筋肉痛そのものは、運動後によくある反応です。ただし、次のような場合は筋肉痛以外の原因も考えられます。

  • 予想をはるかに超える強い筋肉の痛み、ひどい腫れ、著しい脱力がある
  • ふだんできる動作ができない
  • 尿が茶色・コーラ色になった、尿の量が減った
  • 発熱や強い体調不良がある

こうした場合は運動を中止して、すぐに医療機関を受診してください。けがをした直後の強い関節の痛み、変形、体重をかけられないといった場合も、早めの受診が必要です。(これらの目安は、今回の研究の結果ではなく一般的な目安として付け加えています)

この記事は一般的な健康情報であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。

参考文献

  1. Herbert RD, de Noronha M, Kamper SJ. Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(7):CD004577. PubMed/DOI
  2. Jamtvedt G, Herbert RD, Flottorp S, et al. A pragmatic randomised trial of stretching before and after physical activity to prevent injury and soreness. Br J Sports Med. 2010;44(14):1002-1009. PubMed/DOI
  3. Afonso J, Clemente FM, Nakamura FY, et al. The Effectiveness of Post-exercise Stretching in Short-Term and Delayed Recovery of Strength, Range of Motion and Delayed Onset Muscle Soreness: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Front Physiol. 2021;12:677581. PubMed/DOI
  4. Lauersen JB, Bertelsen DM, Andersen LB. The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2014;48(11):871-877. PubMed/DOI
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