1日1万歩は本当に必要?最新研究からわかった『歩数』と健康の関係

「1日1万歩」——本当に必要なんでしょうか?

……ちょっと気になって、調べてみることにした。

そもそも、この数字、どこから来たんでしょう。

調べてみると、医学研究から決まった数字ではなかったりするんですわ。1965年、日本の歩数計の商品名が由来だという説が、複数の記事で紹介されている。

……これ、ちょっと意外じゃないですかね。

(※由来については一次資料までは確認できておらず、複数のメディア記事で紹介されている説として扱っている。)

じゃあ、研究では実際どうなんでしょう。

目次

……あれ、もっと手前から関連が見えている

【ここに記事内イラスト:歩数が増えるほどリスクが下がり、途中から緩やかになる曲線】

1万歩よりかなり手前から、もう関連が見えていた。

死亡リスクも、心臓や血管の病気も、歩数が増えるほどリスクが低い傾向がはっきりしていて、ある程度のところから、その変化はゆるやかになっていく。1万歩に届いたかどうかで、急に何かが変わるわけではなさそうだ。

実際、4万7千人・22万人規模の研究では、3,000〜4,000歩前後から、歩数の多い人ほどリスクが低い傾向が見え始めていた。心臓や血管の病気でも、11万人規模の研究で2,700歩台あたりから同じような関連が見え始め、7,000歩台に来るころには、変化はだいぶゆるやかになっていた。

実際、論文を読んでみると、こう書かれていた。

■研究では、実際にこう報告されています

“progressively decreasing risk of mortality among adults aged 60 years and older with increasing number of steps per day until6000–8000 steps per day and among adults younger than 60 years until 8000–10 000 steps per day.”

— Paluch AE, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts The Lancet Public Health, 2022

参照:PubMed 原著論文(全文)

これを簡単に言うと……60代以上では6,000〜8,000歩あたりまで、60歳未満では8,000〜10,000歩あたりまで、歩数が増えるほど死亡リスクがじわじわ下がり続けていた、ということだ。年齢によって「ちょうどいい歩数」の目安が少し違う、という点もこの研究から見えてくる。

じゃあ、多ければ多いほどいい?

……そう単純でもなさそうだ。

4,500人規模の研究では、5,000歩を超えると糖尿病と診断された割合が低い傾向が見られたが、1万2,500歩を超えると、その傾向がはっきりしなくなっていた。

この「はっきりしなくなっていた」というのが具体的にどういうことか、論文を確認してみると、こう報告されている。

■研究では、実際にこう報告されています

“0.68 (95% CI: 0.37–1.24) for >12,501 steps/day”

— Pulsford RM, et al. Not all steps are equal: independent prospective associations of stepping volume and patterns with incident type 2 diabetes mellitus in the Maastricht study International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 2025

参照:PubMed 原著論文(全文)

これを簡単に言うと……1日5,000歩以下の人たちと比べて、1万2,500歩を超える人たちの糖尿病リスクは、数字の上では低めだが、信頼区間(95%CI)が1をまたいでしまっていて、「統計的にはっきり低いとは言い切れない」という意味だ。歩数を積み増せば積み増すほど際限なく効果が伸びる、というわけでもなさそうだった。

「1万歩に届いているか」だけでなく、「多すぎても意味が薄れるかもしれない」という話まで出てくる。

ただし、これは覚えておきたい

ただし、ここは勘違いしないでほしい。

今回の研究は、「歩数が多い人ほど、こういう傾向があった」という話だ。「歩けば病気を防げる」と証明したわけではない。

もともと元気だからよく歩けている、という逆の可能性もあるし、他の生活習慣が影響している可能性も残る。PTとしても、歩数だけで健康を判断するのは、ちょっと乱暴だと思う。

結局、自分はどうすれば?

「じゃあ何歩を目指せばいいの?」——答えは「◯◯歩が正解」ではなく、シンプルに2つだけ。

1. まず、今の自分の歩数を知る 2. 無理のない範囲で、少しずつ活動量を増やす

【ここに記事内イラスト:①歩数を確認するスマホ/歩数計のアイコン→②歩く人のアイコン、の2ステップ】

年齢や体力、持病によって無理なく歩ける範囲は人それぞれ違うので、心臓や関節に不安がある方、通院中の方は、歩数を大きく増やす前にかかりつけの医療者に相談してほしい。全員が同じ歩数を目指すべき、という話ではない。

「1万歩」に届いたかどうかで一喜一憂するより、まず自分の歩数を知って、そこから無理のない範囲で増やしていく——そのくらいがちょうどいいんじゃないかと思う。

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