「歳を取ると代謝が落ちて、痩せにくくなる」——そんな話、聞いたことありませんか?
……本当にそうなんでしょうか。気になったので、調べてみることにした。
そもそも、なぜこんなに広く信じられているんでしょう。20代をピークに代謝は右肩下がり、というイメージ、ダイエット関連の情報では当たり前のように語られている気がします。
じゃあ、実際の研究ではどうなんでしょう。
気になって、2021年に『Science』誌に掲載された研究を確認してみた。生後8日〜95歳、29カ国、6,421人分のデータを集め、「二重標識水法」という、エネルギー消費量を測るゴールドスタンダードとされる方法で調べたものだ。
……これが、かなり意外な結果だったりするんですわ。
……あれ、20代〜50代は、ほとんど変わらない
てっきり、20代をピークに右肩下がりだと思っていたら、違った。
除脂肪量(筋肉量など)で調整した1日のエネルギー消費量は、20歳から60歳まで、ほとんど変わらないという結果だった。しかも、妊娠中の女性でも同様に安定していたという。
「歳のせいで代謝が落ちている」と感じていた30〜50代の人にとっては、ちょっと拍子抜けする話かもしれない。
じゃあ、いつから代謝は落ちるのか
……60歳を過ぎてから、だった。
具体的には、60歳を過ぎると1年あたり平均0.7%ずつ低下していく。研究では「63.0歳」あたりが変化の境目(統計的な転換点)だと報告されている。90代になると、中年期と比べて、調整後のエネルギー消費量が約26%低いという。
つまり、「30代・40代・50代の間に代謝がじわじわ落ちていく」という一般的なイメージとは、ちょっと違う結果だったわけだ。
ただし、これは覚えておきたい
ただし、ここは勘違いしないでほしい。
この研究は、同じ人を何十年も追いかけたものではなく、いろいろな年齢の人たちのデータを集めて比較したものだ。「あなた個人の代謝が、この通りに動く」と保証するものではない。
しかも、研究自体が「除脂肪量・体脂肪量・性別・年齢を揃えても、個人差は±20%以上ある」と明記している。同じ年齢・同じ体格でも、代謝には結構な個人差がある、ということだ。
PTとして思うこと
代謝の数字そのものより、この研究が「除脂肪量」、つまり筋肉量を基準にエネルギー消費量を調整している、という点がPTとしては気になるところだ。
代謝が「歳のせいで」勝手に落ちるというより、加齢に伴って筋肉量や活動量が落ちていくことの方が、体重の変化に影響している可能性がありそうだ。
実際、論文を読んでみると、こう書かれていた。
■研究では、実際にこう報告されています
“considerable metabolic variation among individuals, with TEE and its components varying more than ±20% even when controlling for fat free mass, fat mass, sex, and age”
— Pontzer H, et al.
Daily energy expenditure through the human life course
Science, 2021
これを簡単に言うと……筋肉量や体脂肪、性別、年齢がそろっている人同士を比べても、エネルギー消費量には2割以上の差が出る、ということだ。「同じ年齢だから代謝も同じ」とは言えない、というのがこの研究からわかる。
結局、自分はどうすれば?
「痩せにくくなった」原因を、「歳のせいで代謝が落ちたから」と決めつけて終わらせるのは、ちょっと早いかもしれない。
1. 筋肉量を落とさない運動を意識する
2. 日々の活動量(座りっぱなしになっていないか等)を見直す
この2つの方が、少なくとも60歳になるまでは、「代謝」そのものより影響が大きそうだ。もちろん、体重の増減には食事や睡眠など他の要因も関わってくるので、「これさえやれば大丈夫」というわけではない。持病がある方や、大きな体重変化がある方は、自己判断せず医療者に相談してほしい。
