セックスは運動になる?性行為の消費カロリーを研究で調べてみた

「セックス♂♀って、けっこうカロリー使うらしいよ」

雑誌やネットで、こんな話を見かけたことはありませんか?「ジョギング並み」「◯◯kcal消費」なんて数字が並んでいることもあります。

……でも、これ本当なんでしょうか。

そもそも、性行為の消費カロリーなんて、どうやって測るのか。そして、それは「運動」と呼べるくらいの強さなのか。

身体活動を専門にしている立場としても、ちょっと気になるところです。気になったので、研究を掘ってみました。

先に書いておくと、この記事は「性行為をしたほうがいい」「健康のためにすべき」という話ではありません。性行為をする・しない、どんな形で関係を持つかは人それぞれです。ここでは純粋に、「体を動かす活動として見ると、どのくらいなのか」を研究から見ていきます。

調べてみると、この疑問、実際に測った研究がちゃんとありました。しかもその結果が、世間のイメージとも「まったく運動にならない」という声とも、ちょっと違うものだったりするんですわ。

目次

自宅で測った研究があった

中心になるのは、2013年にカナダのFrappierらが報告した研究です。

対象は、モントリオール地域の若い異性カップル21組(42人)。平均年齢は22.6歳です。

やり方はこうです。

  • 腕にアームバンド型の測定器を付けてもらう
  • 1か月間、週1回、自宅でふだんどおりに性行為をしてもらい、計4回のエネルギー消費を測る
  • 別の日に、同じ人たちにトレッドミル(ランニングマシン)で中強度の運動を30分してもらい、比べる

研究室ではなく、自宅という「いつもの環境」で測ったのがポイントです。

ただし、消費カロリーは腕の測定器から推定した値で、呼気のガスを分析して直接測った値ではありません。

研究で定められた一連の性行為(前戯なども含み、終わるタイミングはカップルの判断)の時間は、平均24.7分でした。

結果:平均約85kcal、強さは「中強度」

結果はこうでした。

  • 男性:平均101kcal(1分あたり4.2kcal)、強さは6.0 METs
  • 女性:平均69.1kcal(1分あたり3.1kcal)、強さは5.6 METs
  • 全体の平均:約85kcal、5.8 METs

METs(メッツ)は、安静に座っている状態を「1」としたときに、その何倍のエネルギーを使うかを表す運動の強さの単位です。

著者らは、この5.8 METsを「中強度」と表現しています。

■研究では、実際にこう報告されています

“The present study indicates that energy expenditure during sexual activity appears to be approximately 85 kCal or 3.6 kCal/min and seems to be performed at a moderate intensity (5.8 METS) in young healthy men and women.”

— Frappier J, et al.
Energy expenditure during sexual activity in young healthy couples
PLoS One, 2013

参照:PubMed 原著論文(DOI)

「中強度」。思ったよりしっかりした数字です。

でも、ランニングマシンでの運動と比べると?

ここで、同じ人たちの30分のトレッドミル運動の結果を並べてみます。

  • 男性:276kcal(1分あたり9.2kcal)、8.5 METs
  • 女性:213kcal(1分あたり7.1kcal)、8.4 METs

1分あたりで比べると、性行為は男性で4.2kcal、女性で3.1kcal。トレッドミル運動の半分以下です。

少なくとも、この研究の中強度のトレッドミル運動と比べると、平均の消費量はかなり低い。「ジョギング並み」と一律には言えない、ということです。

いちばん面白かったのは「個人差」

ただ、この研究でいちばん目を引いたのは、平均よりも「幅」でした。

1回あたりの消費カロリーは、

  • 男性:13.0〜306.1kcal
  • 女性:11.6〜164.1kcal

強さも、1.3〜9.6 METsまで散らばっていました。

男性の最大値306.1kcalは、30分のトレッドミル運動の平均276kcalを上回っています。一方で、10kcal台の回もある。

……なるほど。「セックスは◯kcal」と1つの数字で語るのは、かなり無理があるわけで。

実は、1984年にBohlenらが健康な男性10人を実験室で測った研究でも、著者らは同じことを書いています。人によっても、行為の内容によっても負荷の差が大きいので、「階段◯階分」のような1つの活動に置き換えて表すべきではない、と。

50代前後では、心拍や血圧はどうだった?

Frappierらの研究の参加者は、平均22歳の若いカップルでした。健康的で、週2時間以上運動している人たちです。

じゃあ、もう少し上の年代ではどうか。

2007年のPalmeriらの少人数の研究は、男性19人(平均55歳)と女性13人(平均51歳)を対象にしています。同じ人に、まず運動負荷試験(トレッドミルで段階的に負荷を上げ、限界まで歩く・走る検査)を受けてもらい、その後、自宅での性行為中の心拍数と血圧を記録しました。

結果、性行為中の最大心拍数は、運動負荷試験の最大時と比べて、

  • 男性:72%
  • 女性:64%

でした。

著者らは、性行為の負荷を「中程度」とし、運動負荷試験の段階で言えば、男性は2段階目、女性は1段階目くらいに相当すると結論しています。

ただし、この研究で測ったのは心拍数と血圧で、消費カロリーではありません。30〜50代の消費カロリーを直接測った研究は、今回は見つけられませんでした。

身体活動の「辞書」ではどう載っている?

もう一つ、見ておきたいデータがあります。

身体活動ごとの強さ(METs)をまとめた「Compendium of Physical Activities」という、運動研究でよく使われるデータ集です。2024年に最新版が公開されています。

ここに、性行為も載っていました。

  • 軽め:1.8 METs
  • ふつう:3.0 METs
  • 強め:5.8 METs

同じデータ集で歩行を見ると、平地を時速約4kmで歩くのが3.0 METs。時速6.4〜7.1kmのかなり速い歩きが5.5 METsです。

つまり、「ふつう」の性行為は、平地を時速約4kmで歩くのと同じくらいの強さ。強めになると、かなりの速歩きに近づく。

実測研究の平均(5.8 METs)は、このデータ集でいう「強め」と同じ水準でした。参加者が若くて運動習慣のある人たちだったことが関係している可能性はありますが、この研究だけでは確かめられません。

心臓への負担は?

「運動になるくらいなら、心臓に負担がかかるのでは?」という疑問もあると思います。

健康な人を対象にした研究をまとめた2016年のレビュー(11件)では、収縮期血圧(いわゆる上の血圧)はオーガズムの時点でピーク(男性163mmHg、女性142mmHg)になり、その後すぐに元に戻っていました。上昇は「控えめ」と表現されています。

もう一つ、2011年に『JAMA』に報告されたメタ解析があります。性行為の直後は、心筋梗塞のリスクが一時的に高くなる(相対リスク2.7倍)という関連がありました。

数字だけ見るとドキッとしますが、ここは落ち着いて読みたいところです。

リスクが上がるのは一時的で、機会も限られるので、実際に増える人数(絶対リスク)は小さいと著者らは計算しています。週1時間、性行為や運動の時間が増えるごとに、心筋梗塞は1万人あたり年2〜3件増える程度です。なお、性行為についての推定は、3件という少ない観察研究にもとづくものです。

そして面白いのが、ふだんから体を動かしている人ほど、この一時的なリスクの上昇が小さかったこと。これは観察研究なので、「運動すれば防げる」とまでは言えません。それでも、ふだんの運動習慣と関係がありそうだ、というのは覚えておいていい結果です。

PTとして、私はこう考えます

研究を調べてみて、私はこう整理しました。

性行為は、身体活動の一つではある。でも、健康のための運動の代わりになると判断できる研究はない。

研究で確認されたのは、次のことです。

  • 強さは、軽め〜中強度くらい(1.8〜5.8 METs)
  • 若い健康なカップルでは、1回平均約85kcal
  • 1分あたりの消費は、同じ人の中強度のトレッドミル運動の半分以下
  • 個人差がとても大きい

ここから私が考えるのは、性行為は「散歩〜速歩き」くらいの範囲の身体活動として、日常の活動の一場面に数えられる、ということです。

一方で、時間も強さも、そのときどきで大きく違います。健康のための運動として、計画的に量を確保しにくい性質のものです。

WHOは成人に、中強度の身体活動を週150〜300分行うことを勧めています。この目安を性行為だけで満たそうとは、私は考えません。満たす方法としては、ウォーキングや筋トレのような、自分で時間と強さを決められる運動が現実的です。

それから、「セックスで痩せる」という話。今回の研究の平均値(1回約85kcal)だけで見ても、体重管理の手段として期待するのは難しいと考えます。

結局、自分はどうすれば?

1. 「セックスは運動になる?」への答えは「軽め〜中強度の身体活動にはなる。ただし平均すると、この研究の中強度のトレッドミル運動ほどではない」
2. 健康のための運動は、それとは別に、ウォーキングや筋トレなど自分で続けやすいもので確保する
3. 「◯kcal消費」「◯◯と同じ」という1つの数字は、話半分で受け取る

1は研究結果のまとめ、2と3は研究を読んだうえでの私の考えです。

性行為をしない人、できない時期がある人が、健康面で何か損をしているという話ではありません。体を動かす方法はほかにいくらでもあります。

なお、性行為中や階段を上るときなどに、胸の痛みや圧迫感、強い息切れ、動悸、めまいが出る人は、その原因を確かめるために医療機関に相談してください。心臓の病気で治療中の人は、主治医に確認しておくと安心です。(この目安は、今回の研究の結果ではなく一般的な目安として付け加えています)

今回紹介した研究は、いずれも人数が少なく、消費カロリーは推定値で、実測研究の対象は若い異性カップルや50代前後の男女に限られます。性的指向や関係のあり方が多様であることを考えると、ここでの数字は「ある条件での一例」として読んでください。

この記事は一般的な健康情報であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。

参考文献

  1. Frappier J, Toupin I, Levy JJ, Aubertin-Leheudre M, Karelis AD. Energy expenditure during sexual activity in young healthy couples. PLoS One. 2013;8(10):e79342. PubMed/DOI
  2. Palmeri ST, Kostis JB, Casazza L, et al. Heart rate and blood pressure response in adult men and women during exercise and sexual activity. Am J Cardiol. 2007;100(12):1795-1801. PubMed/DOI
  3. Bohlen JG, Held JP, Sanderson MO, Patterson RP. Heart rate, rate-pressure product, and oxygen uptake during four sexual activities. Arch Intern Med. 1984;144(9):1745-1748. PubMed/DOI
  4. Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, et al. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. PubMed/DOI/Compendium(Sexual Activity)
  5. Davidson R, Elliott S, Krassioukov A. Cardiovascular Responses to Sexual Activity in Able-Bodied Individuals and Those Living with Spinal Cord Injury. J Neurotrauma. 2016;33(24):2161-2174. PubMed/DOI
  6. Dahabreh IJ, Paulus JK. Association of episodic physical and sexual activity with triggering of acute cardiac events: systematic review and meta-analysis. JAMA. 2011;305(12):1225-1233. PubMed/DOI
  7. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. PubMed/DOI
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